2年目の研究では、1年目の情報収集結果を考慮しながら、実際の在宅医療場面における医療者および患者・家族(地域住民)に対して、必要な人材とその人材確保に要するコスト及び支払い意志を調査し、在宅医療で必要とされる医療人的資源の質、量と配置のあり方を検討した。 調査対象は1)医療-介護の継続ケアを提供する地域の医療機関、2)地域中核民間病院の在宅サービス提供者と利用者、および3)都市部の在宅専門クリニックで働く医療従事者と対象患者(家族)である。調査結果を要約すると、まず1)では、調査対象38医療機関の半数以上が、在宅医療を新規に開始したり提供量を増やす場合に人員配置態勢の変更が必要と感じており、増員すべき職種として看護師、医師、理学療法士/准看護師、介護福祉士等があげられた。ただ、そのためには訪問1回あたり平均6000円近い医療費単価の増額が求められる。また、2)および3)では、患者の健康状態、治療への満足度を考慮した自作質問紙調査の結果では、(1)悪性疾患やターミナル期における在宅医療では医師の不足が顕著に認識されている、(2)回復期や安定期では逆に看護師、PT/OT、介護福祉士およびホームヘルパーの必要度が高まる、(3)治療に対する患者満足度や職員自身の満足度は、彼らの支払い意志やコスト評価には直接影響しない、(4)常時家族の支援があるかどうかは、医療者の職務満足に影響を与え、かつ患者の支払い意志にゆるやかな影響を及ぼすことが明らかになった。 以上から、ア)悪性やターミナル患者に対する在宅医療の充実には、在宅医療に習熟した医師の確保が急務であり、イ)適切でタイミングのよい医療的支援が提供されるかどうかが、人材確保に関する患者(家族)のコスト支払い意志に影響を及ぼす、またウ)在宅における急性期と慢性期の区分けは、医師や看護師の効率的な配置にとって重要であり、そのために適切な政策的誘導が必要であると考えられた。
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