研究概要 |
本研究は,ネットワーク型公益事業における「ネットワーク設備の共同利用」という事象に注目して,(1)不確実性下における設備投資と接続料金の決定形態に関する理論分析や(2)接続料金の決定形態とネットワーク建設のための提携誘因に関する理論分析を行うことを目的としている. 本年度は,特に(1)の理論分析が進展した.水野が中心となって,不確実性がインフラ建設(たとえば,都市ガス事業者のガス・パイプライン増設や電気通信事業者の光ファイバーケーブル建設)誘因にいかなる影響を与え,社会的に望ましいインフラ建設を促進させるために接続料金や託送料金はどのように設定されるべきであるか,その政策提言を与える簡単な理論モデルを開発した.理論モデルは,民間事業者がインフラ建設決定権限,規制当局が接続料金設定権限を持っており,インフラ建設は地域の需要拡大効果を持つことを想定している. モデル分析より現在次の結論が得られている.第一に,任意の接続料金のもとで,需要拡大効果および不確実性が大きいとき,民間事業者のインフラ建設の誘因は社会的な視点からみて過少になり(過少投資),インフラ稼動費用が大きいとき,建設誘因は過剰になる(過剰投資)傾向がある.第二に,その補正のために規制当局は,需要拡大効果が大きいときは接続料金を上昇させねばならないことが指摘される.第三に,不確実性が大きい場合,最適接続料金のもとでは(社会的最適に比較すると)過少投資が生じ,インフラ稼動費用が大きい場合,最適接続料金のもとでは過剰投資が発生しやすいことが示された. 他方,この論文に関連した「設備投資の特性と接続料金設計」と題する研究を土門が中心となって進めている.これは,設備投資が需要拡張効果を持つ場合と生産費用削減効果を持つ場合で,最適接続料金設計にいかなる相違点が生ずるかを分析するものである. いずれの研究も未だ発展途上段階であり,来年度もこれらの理論研究を一層発展させたものを学術雑誌等で公表していく予定である.
|