研究概要 |
本年度は,「オープン・アクセス環境における企業間提携の誘因」(水野)と「市場融合下における託送料金とネットワーク設備投資誘因の関係」(土門)について,その研究成果を得た. (1)オープン・アクセス環境における企業間提携の誘因 逐次的提携形成ゲームをオープン・アクセス環境に応用し,提携が「費用削減効果」を持つケースと「需要拡大効果」を持つケースに分けて分析した.提携が費用削減効果を持つ場合,接続・託送料金が十分低い,あるいは十分高い場合,先発企業は他のすべてのライバル企業を巻き込む提携(全体提携)を結ぶ誘因を持つ.それが中間水準にある場合,先発企業は中規模の提携を結び,後発企業は先発企業のインフラ施設に接続するという「接続環境」が実現することが示された.他方,提携が需要拡大効果を持つ場合,財の補完性の程度あるいは相対的需要拡大効果が大きいほど最大提携が実現しやすいことが確認された. 生産費用下落効果ケースと需要拡大効果ケースの相違点は接続状況が発生する接続・託送料金水準に関する点にある.提携が需要拡大効果を持つ場合,接続状況が発生するのは,提携が生産費用下落効果を持つ場合の接続・託送料金水準よりも必ず高いときであることが示された. (2)市場融合下における託送料金とネットワーク設備投資誘因の関係 相互参入の可能性を持つ市場融合下におけるネットワーク設備投資誘因について分析した. まず,市場分離下におけるネットワーク設備投資誘因について考察した.その場合,限界費用託送料金のもとでは,需要の非対称性の程度によって,その投資水準が(社会的な視点からみて)過小および過剰のいずれかが発生することを示した.他方,相互参入の可能性がある市場融合下では,需要の非対称性の程度に関係なく,限界費用託送料金のもとで私的設備投資水準が必ず過小になることを示した.また分析結果より,設備投資誘因を導く政策について論じた.
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