平成17年度は研究の基本方向の整理を行った。まず今までの研究の取り組みを引き続き行い、ベースとなる分析手法を早急に整理することを目標とした。今年度の研究発表論文2本については本テーマの直接の実績ではないが、今後の研究の展開方法を検討し、よりスムーズに研究を進めていくことをめざすためのものである。そして次に研究代表者と研究分担者それぞれが今まで関わってきた地域連携の研究成果を深めることで本研究の基礎サンプルとすることを行った。具体的には広島県芸予諸島に関わる地域(竹原市、三原市、尾道市、福山市、呉市など)、富山県地域(射水市、富山市など)における街づくりおよび港湾整備、交通問題についての研究である。これについて2005年7月の交通権学会全国大会(富山)において風呂本は「瀬戸内海諸島の自立的発展と航路整備」と題して発表、岡本も2005年10月富山県大学間連携講座において「対岸諸国と日本海航路」題して発表した。さらに風呂本は竹原市街並み保存地域の町興し実験店舗プロジェクトに関わり(2005年5月〜11月)、また大崎上島NPO主催コミュニティバス問題シンポジウムで地域活性化における交通問題と住民自治について発表を行った(2006年2月)。岡本も富山伏木の「けんかやま」祭りを活かした街の活性化研究に関わった。研究の方向整理について、現在行っているのは近世および近代における海運および港湾機能による分類と、それらの都市における港湾と地域経済の関係である。特に地方港湾都市の集積度および交通結節点としての機能、その歴史的経緯についての把握、さらに観光要素の抽出である。これについては協同で先行研究の学説整理と瀬戸内海芸予地域でのフィールドワーク(鞆、御手洗、蒲刈、呉)を行い、2006年3月海運理論研究会(名古屋)にて「歴史的な港湾を利用した地方都市における地域活性化」と題して報告を行った。今後は引き続きフィールドワークを進め仔細に整理することにより歴史的変遷および現状を規定する要因について分析を行い、類型別に活性化の途を探ることを行う予定である。
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