研究概要 |
18年度は、実際に歴史的港湾を持つ地方都市において観光と街づくりの視角から実際にフィールドワーク調査を行った。国内においては瀬戸内海地域を重点的に、岡山県瀬戸内市牛窓地区、倉敷市下津井地区、広島県呉市大崎上島、下島御手洗地区において行政の観光担当者および地区住民観光ボランティア、地区一般住民等から各種ヒヤリングを行った。またこれらヒヤリングの過程において、伝統的家屋の修復と地域住民の現代的生活利便性追及が相反して観光に重要な景観保全問題が抽出された。この問題について観光先進地域であるドイツの歴史的港湾都市、ハンザ都市において海外フィールドワーク調査を行った。この日本とドイツの比較については19年度の港湾経済学会で発表するために現在纏め作業中である。 17年度の先行研究整理と文献調査および、18年度前半のフィールドワークを元に、岡本・風呂本共同で、2006年8月26日、「歴史的港湾を活用した地方都市の街づくりと再生」と題して、第45回日本港湾経済学会全国大会において発表、報告を行った。また岡本は2006年9月24日に「環日本海地域における対岸航路の開拓-沿日本海地域の位置づけをめぐって-」と題し,日本地理学会2006年度秋季学術大会において発表、報告を行った。また風呂本は引き続きこれら歴史的港湾が散在する島嶼部が、船舶から自動車への交通体系の変化を受けて転落したという瀬戸内海地域の特性から、国の交通政策を概観し、「道路ネットワーク整備政策における海上部分の欠落問題」として広島商船高等専門学校紀要第29号に掲載した。 本発表の取り纏めの過程において、研究対象地域の歴史的経緯を敷衍する中で、歴史的港湾を持つ地方都市においてはその交通結節点機能の再生による賑わい創出は、国の交通政策の現状においては難しいという結論を持つに至り、観光による地域活性化に特化すべきであるという方向が導かれた。
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