「計画経済」から「市場経済」への経済体制の移行期にはいってから、中国やベトナムは国家所有の私有化を漸進的に進めてきた。これに対して、ロシアは国家所有の私有化を急進的に行った。この過程においてどのような企業が私有化されたか、どういう手続きによって私有化が進められたかを解明する。それだけでなく、前者の中国とベトナムにおいては私的所有が国有生産手段の私有化以外の「増加分」として着実に増えつつある。このような私的所有をよく調べ、どのような産業分野で、個人か家族か、または共同出資によってベンチャーを興したかを明らかにする。このロシア型「大衆的私有化」の手続き、プロセスをさらにいっそう明らかにすることが要請されている。この研究課題はインサイダー、アウトサイダーが国家所有の株を如何に入手できたかをより明確に把握する。また、国有の私有化の他、ベンチャーの興起があるかを明らかにする。 そこで、移行経済における私的所有の生成を一つの社会現象として考察しなければならない。この見地からこの研究課題は経済倫理、社会倫理、大衆生活の理念の変化を重要視し、研究の視点を経済活動の担い手や一般大衆までに降ろして、それらの意識の変化が如何に起きているかを考察することにした。既存の経済学理論を全力的に駆使するだけでなく、社会学の優れた論理を取り入れて、学際的に総合して制度、慣習の形成する社会環境、あるいは土壌の変容に関して比較分析を行った。この比較分析を通して移行経済における生産手段の私的所有の性格を根底から社会科学的にみることができた。
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