研究課題
基盤研究(C)
医療分野では他の財・サービスに比べて情報の非対称性、公共財的性質、不確実性などの諸特徴が強く伴うことから、市場機構ではなく政府介入による「制度」(各種の制度や規制)という非市場型資源配分方式が一定の理論的根拠を持っている。しかし、「制度」は医療サービスの生産や利用の様々な段階における取引の仕組みを規定すると同時に、それに伴う取引費用の発生やその変化を引き起こす。この「制度」に固有な取引費用の存在が資源配分上、および所得分配上に大きな影響を与えている。本研究ではわが国の医療制度のなかでも、とくに診療報酬制度と公私医療機関の併存という2つの「制度」を取り上げ、それがもたらす経済的影響を具体的に解明することが本研究の目的である。診療報酬制度については、その改定が中央社会医療協議会という政治的過程を通じて行われることに加えて、価格規制対象が取引費用を考慮しておもに投入物(あるいは中間生産物)になることから、医療機関の投入物選択行動にバイアスを生じさせる特徴を有していることを明らかにした。また、わが国の公私医療機関の併存という提供システムでは、私的医療機関が非営利性制約のもとにあるものの、property rightsの経済的分析から営利目的の動機が制度的には排除されていないことを解明し、それが投入物選択行動に影響することを明らかにした。両制度の経済分析を通じて、現実の医療サービス市場では公私医療機関間における経済的成果の相違および競争圧力の希薄性を理論的および実証的に吟味した。さらに医療のIT化のもとにおける制度設計の在り方を考察している。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 図書 (2件)
経済学会雑誌 第36巻
ページ: 21-38
Government Auditing Review Vol.14
ページ: 13-25
Okayama Economic Review Vol. 38, No. 4
Government Auditing Revkw Vol. 14
会計検査研究 第34号
ページ: 55-66
Government Auditing Review Vol. 34