この研究は、複数均衡を持つ可能性のある動学的一般均衡モデルにおける経済政策を、現実的な問題の枠組みの中で実証的・規範的に分析することによって、具体的な経済政策の提言を試みるものである。(平成17年度研究計画調書「研究目的」参照。)2年計画の初年度である平成17年度では、以下のような研究成果が得られた。 1.「公共財生産費用過大申告問題」;この研究では公共財・サービスの発注者である政府をプリンシパル、受注者をエージェントとして、公共財・サービスの生産費用が確率的に変動し、その実現値がエージェントの私的情報であるために、受注者が政府に対して生産費用を過大申告することによって生じる問題を分析した。(広島大学経済論叢第29巻第3号に掲載。(2006年)) 2.The Effects of Optimal Redistribution Policy on the Competitive Balance and Quality of the Professional Baseball League(プロ野球リーグにおける最適再分配政策が、戦力バランスとリーグの質に及ぼす効果);この研究では近年におけるプロ野球リーグの構造的問題について分析した。我国におけるプロ野球リーグの問題は、1990年代の不況と国際化の進展による産業構造の変化を反映しており、このため今日のプロ野球リーグの構造的問題の分析は、我国の多くの産業が、現在および将来において対応しなければならない問題にも応用することが出来るだろう。本研究の分析は、リーグ経営主体(コミッショナー事務局)による、プロ野球リーグ全体の価値を最大化することを目的とした政策的介入が、チーム間の戦力バランスと、リーグの質に及ぼす影響について分析した。この研究は以下の大学・研究機関におけるセミナーで報告された。(1)明治学院大学産業経済研究所、2006年2月28日。(2)熊本学園大学付属産業経営研究所、2006年3月17日。
|