本年度は、昨年度に引き続き地場サプライヤーのものづくり能力の現状を、品質、納期、コスト、エンジニアリング(QCDE)のパフォーマンス、従業員個人レベルおよび企業レベルの能力水準の両面から把握することを目的として研究を行った。さらに、既存あるいは計画中の企業・業界・国家レベルの対策・攻策の内容を検討評価した。こうした分析に基づいて、国際競争力ある地場サプライヤーを育成するために能力開発の観点から必要な政策のあり方を検討した。具体的には、以下の項目について作業を進め、それぞれ成果を得ることができた。 1)平成17年度調査の結果を踏まえ、テーマについて理論的視点の再整理とモデル化を行った。この結果、研究視点の点検と論点の精緻化を図ることができた。 2)平成18年8月及び平成19年3月に実施した現地ヒアリング調査(計10社)によって具体的な事例の分析を深め、企業レベル、産業レベルのものづくり能力開発を分析した。その結果、比較的独立した課題と捉えられてきたQCDとEに関する能力開発が、QCDがEの基盤となるという段階として把握できることを明らかにした。 3)2)と同時期に実施した現地調査において、日タイの官民で進めている自動車産業能力開発プログラムの実施状況について、研修現場での調査を含む関係者へのヒアリングを実施した。ここでも、個人・職場・企業レベルでQCDとEを段階的かつ包括的に形成するカリキュラムが実施されていることが確認できた。同プログラムは、タイで実施されている他のプログラムと比較してものづくり能力開発をより包括的に捉えている点で評価できた。 4)2)と3)の結果を踏まえて、段階的・包括的なものづくり能力開発の視点に基づく政策のあり方を取りまとめた。 5)研究結果の全体的とりまとめと整理を行った。現在、最終報告書の執筆を進めているところである。
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