本年度は、東アジア諸国と中国の経済成長に関して国際的な資本フローの動向を中心に研究を行った。特に、長期国際資本フローを長期債務、海外直接投資(FDI)、ポートフォーリオ投資、贈与などに分類して概観した結果、東アジア諸国の通時的な経済成長や経済発展に伴ってFDIやポートフォーリオ投資の増大は顕著であり、一方で贈与は減少傾向が見られた。また、1997年に発生したアジア通貨危機に際しては、多くの東アジア諸国で一時的な経済低迷に伴って長期債務を含む国際資本フローが全体的に縮小したものの、韓国やタイのようにFDIの流入が増大した国もあった。なお、アジア通貨危機の影響をほとんど受けなかった中国への国際資本フローの増大は著しく、FDIやポートフォーリオ投資の増大は堅調な中国経済を印象づけるものでもあった。結果的に、アジア通貨危機はインドネシアなどを除く多くの東アジア諸国にとって一時的な経済低迷をもたらすにとどまり、その後多くの東アジア諸国は急速に経済回復を果たすことになった。 ところで、東アジア諸国の経済成長に伴い、この地域において減少傾向を示した国際資本フローの公的部門、すなわち政府開発援助(ODA)についてその特徴を探ってみると、国際的に近年その援助額は全体として増大傾向にある。その大きな理由としては2000年9月に国連総会で採択されたミレニアム宣言をもとに提唱されたミレニアム開発目標(MDGs)などの影響を取上げることができる。東アジア諸国全体としては経済成長を続ける国が多いものの、サブサハラ・アフリカ諸国と同様に、所得レベルやその他の社会開発指標が芳しくないLDCs(低開発国)に分類される国も東アジア地域では見受けられ、これらのアジアLDCsにはより一層の公的部門における国際資本フローの増大と技術協力の増加が検討されるべきである。
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