本年度も昨年度に引き続き国際資本フローの中でも特に公的部門、すなわち政府開発援助(ODA)について最近の国際的な潮流について探ってみた。まず、日本を除く主要援助国では全体としてその援助額は近年増大傾向にある。90年代に明らかであったODA(政府開発援助)の減少傾向に歯止めがかかり、2002年から増大傾向に転じた直接的な契機として、2000年9月に国連総会で採択されたミレニアム宣言をもとに提唱されたミレニアム開発目標や、2001年9月にアメリカで発生した同時多発テロ事件におけるテロと貧困の関連性の指摘などを取上げることができる。 最近の開発援助の動向からは、経済成長が顕著な中国を含む東アジアへの援助は引き続き減少傾向を示しているものの、所得レベルやその他の社会開発指標が芳しくないLDCs(低開発国)、またはLDCsの多くの国を含むサブサハラ・アフリカ諸国への開発援助が増大していることが上げられる。さらに、開発援助の拠出をセクター別にみた場合には教育や政府・市民社会へのインフラを含む社会関連インフラなどへの援助が特に拡大していることがわかる。なお、国連ミレニアム・プロジェクトでも示されているように、途上国では様々な部門において専門家が不足している。 ミレニアム開発目標をはじめ途上国のいかなる開発問題に関しても、その進展に向けて先進国からの資金援助と技術協力が不可欠であることはここで強調するまでもない。今後はアジアやアフリカのLDCsへの資金援助や技術協力について更なる増加が検討されるべきであろう。
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