産業クラスターおよび産業クラスター政策については、近年、急速に論文数、著書数が増加しており、欧米の文献の収集を現在行っている。一部文献については、すでに購入済みであるが、現在注文中で次年度以降購入する予定となっている文献も複数冊ある。 すでに収集した文献をもとに、現在の産業クラスターの研究動向を分析してみると、産業クラスターの研究は、欧米では、都市および大学を核とした「地域クラスター」として捉えられる傾向がみられ、また、ローテク産業のクラスターについての研究も増加傾向にあるように見受けられる。 「産業クラスター」と「地域クラスター」という異なる分析視角について、整理する必要性を感じ、マイケル・ポーターのクラスター論の再検討を行った。マイケル・ポーターのクラスター論は、当初、関連支援産業を重視した産業体系としてクラスターを把握していたが、その後、競争力評議会の調査報告書では、都市圏単位での産業分析という「地域クラスター」への変化がみられることが明らかになった。 実証分析面では、大阪の彩都および神戸の再生医療クラスターについてヒヤリングを実施した。日本においては、内陸部から臨海部への産業立地のシフトがみられ、アジアとの分業体制との構築や素材系企業による臨海部用地の販売などの影響を受け、欧米と異なる状況が生まれつつある。 とくに、市場条件として国内および地域市場への依存度が低下してきており、アジア市場の成長にともなって、マイケル・ポーターのダイヤモンドモデルでいう関連支援産業と市場条件の地域的不一致が拡大しているように思われる。そこで、これまで研究してきた半導体産業を題材として、「グローバル時代のクラスター戦略一束アジア半導体産業の競争・連携・イノベーション」という共同研究プロジェクトを開始した。国際東アジア研究所、立命館大学浜田教授、NISTEPの近藤研究員、九州経済調査協会の参加を得て、大規模な国際アンケート調査と出版を企画することにした。すでに、共同研究会を3回開催し、出版の章立て、アンケート調査の項目について検討し、2008年出版に向けて、出版社との交渉を開始した。 平成18年度は、文献の収集と解読および共同研究プロジェクトの立ち上げを中心に行ったため、研究成果の公表については、2回の学会報告(共同発表)および関連する論文2本の執筆となった。
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