本研究は日本型雇用システムが変容するなかで専門性の高いホワイトカラー層の育成がどのように行われるのか、また労働条件の水準がいかなるものになるか、実態調査をもとに明らかにした。調査を行った企業は民間大企業7社、専門職の人材供給を行う企業2社である。文献調査も踏まえて、実態調査から明らかになった知見は以下の通りである。 これまで企業内の内部昇進過程は強固であった。処遇専門職という専門職とは異なる制度を採用してきたことも内部昇進制度を維持する補完制度として位置づけられる。ところが、90年代に起きた市場圧力の強化は日本型雇用システムの変化を余儀なくした。その変化は大きいものとみなされていた。聞き取りから明らかになった点は以下の通りである。第1に、市場志向型の人事管理は導入されているが、組織志向の内部昇進制度は強く残っている。組織志向の範囲が狭まり、市場志向が強まる結果、内部昇進に残るためのより厳しい競争が起きている。第2に、企業内に潤沢に存在する管理職層から必要な人材を調達したり、関係会社へ切り離したりする管理制度を縦横に仕切りながら必要な人材を調達する「人事管理制度のフロー化」現象が進んでいる。こうした市場志向型を補完する企業内外の取り組みが展開している。これは、内部昇進に乗らない専門職型ホワイトカラーの雇用を安定化させるものとして評価できる。しかしながら、企業内での主要人材の供給についての組織志向は強固に続いている。このとき、専門職型ホワイトカラーの養成を企業が独自に行う傾向は強く、内部昇進ではない市場調達型の専門職型ホワイトカラーの労働条件は市場の影響を受けやすく、自律の基盤は脆い。
|