研究課題
基盤研究(C)
1990年代末以降、日本の製造業の中国への直接投資が増加し、とくに電機など機械関連産業の現地生産が拡大した。こうした現地生産の拡大は、部品の輸出拡大や完成品の輸入増などを通じて日中間の貿易を拡大させており、経済の相互依存関係は強まった。本研究で調査した日系企業の進出先は生産基盤が整備されており、問題は少ない。そうしたなかで現地生産の位置づけは企業によって異なるが、輸出基地として位置づけられてきたところも、中国市場の拡大によって中国国内むけの生産が拡大している。大手完成品メーカーの中国の工場は、グローバル生産の下で中国市場と日本市場にむけた生産拠点となっている。製品によっては日本国内でも同じ工程で同一製品を生産しており、中国への生産の一方的移転ではなく、両者は競争関係にある。一方、部品メーカーは日系メーカーの要請で進出するケースが多いが、生産の拡大のためには販路拡大が求められる。部品は世界各地にむけて輸出されるものが中心で、販売、開発・設計等も本社機能であり、加工貿易型といえる。部品は多品種少量生産が多く、製品・生産量ともに変化が大きいことがコスト面の負担になっている。他方、中国に進出した日本の中小企業のなかには、中国で困難な最先端技術を基礎にした現地生産を行い、日本の国内生産との補完関係を形成しているところもある。中小企業の町である坂城町の企業には中国進出をめざす企業も少なくないが、取引先の要請で進出した場合でも、新しい取引先を開拓するなど、現地生産が事業拡大に結びついているケースもある。海外生産は、国内生産の移転・縮小ではなく、国内生産との補完関係にあることが多い。こうしたなかで、現地生産はあくまで量産の基地と位置づけられており、開発設計などの機能は国内に残っている。これらの点からみれば、国内生産への影響は限られているといえよう。
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広島法学 第31巻2号
ページ: 39-66
Hiroshima Hogaku Vol.31, No.2