研究概要 |
平成17年度においては、本研究の分析に用いるシミュレーション可能な理論的枠組みの構築を目指して研究を進めた。具体的には、日本経済の金融政策を分析対象としているCoenen and Wieland(2003,Journal of Monetary Economics50,1071-1101)のモデルを出発点として、理論的枠組みの考察とプログラミング作業を平行して行った。賃金決定方程式は、3期先までの一般物価水準の加重平均および3期先までのGDPギャップの加重平均の和とした。総需要関数に相当するGDPギャップの決定式については、GDPギャップのラグ(3期まで考慮)、実質金利の1期ラグ、実質為替レートの関数とした。これらの方程式を日本、米国、ユーロエリアについてGMMおよびVARモデルによる推計を試みた。日本と米国のGDP、GDPデフレータについてはIMFのIFSより取得した。ユーロエリアについては、欧州中央銀行における研究開発されたAreaWide model databaseから取得した。EU加盟の11ヶ国(Belgium, Germany, Spain, France, Ireland, Italy, Luxembourg, Netherlands, Austria, Portugal, Finland)について購買力平価で評価したGDPを加重平均することにより算出した1995年価格のユーロエリアGDPが四半期ベースで公表されている。金利についてはIFSから取得可能な3ヵ月物金利を利用した。日本と米国のGDPギャップについてはOECDの推計値を利用し、ユーロエリアについては対数線形トレンドからの乖離とした。計測期間はCoenen and Wieland(2003)と同様に1980年第1四半期から1998年第4四半期までとした。しかし、Coenen and Wieland(2003)と同様な計測結果を得ることはできず、現在データやおよび操作変数の選択などを再検討している。また、合理的期待モデルのシミュレーションを実行可能にするために、Anderson and Moore(1985,Economics Letters 17,247-252)で論じられたQR分解を計算するAIMアルゴリズムのプログラミング作業に取組んでいる。
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