研究概要 |
平成19年度の研究では、基本モデルの関係式について、目本のデータを用いて推計・検討した。対象期間は1980年から1998年とした。自然算出水準については、前年度の研究結果からButter worthフィルターを利用した。趨勢除去方法についてはChristiano and Ftizgerald(2003,International Economic Review 44,p.439)で用いられたドリフト調整法を利用した。産出ギャップと実質利子率との関係、インフレ率と産出ギャップの関係式の推計を行い、ベース・ケースとなるパラメータ推定を試みた。シミュレーションの効率性を考え、線形あるいは線形変換容易な関数形を検討した。推定値の統計的に不安定性のため、想定するパラメータ範囲の設定を推定結果に頼ることが困難である。試行錯誤の末、頑健かつ解釈可能な範囲を決める方法の一つとして、物価や金利など月次で得られるデータを中心に年間変動の大きさでデータ分類をし、分類ごとにパラメータの範囲を設定する方法を検討した。分布によらない簡便な方法としてWilcoxonの順位和検定を利用して年内変動に統計的差異を検定し、差異の有無をもって分類することとした。分類作業実行のために、Wilcoxon検定の理論的背景、正確な有意確率の計算方法を調査・検討し、多年数に渡るデータの検定を効率的に行うプログラムを完成した。補助金により利用可能となった文献データ・ベース、ACM Transactions on Mathematical Software(the Association for Computing Machinery提供)を利用することで作業効率を高めた。その研究成果の一部は、拙著"Exact and Pseudo P-values in the Wilcoxon Unpaired Test with Ties"(成城大学「経済研究」第180号、pp.1-22)に発表した。
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