平成17年度において、経済産業研究所と共同でJIP2006データベースの作成を実施した。JIP2006は、JIP2003データベースに比して産業分類を84部門から108部門へ拡張し、また期間も1970-1998年から、1970年-2002年に延長した。加えてSNAの68年基準に準拠から、93年基準への準拠に変更し、ソフトウェア投資等IT化のインパクトをより正確に計測することが可能となった。また、このJIP2006のデータベースに準拠して、規制インデックスを作成し、各産業における規制の状況を把握することが可能となった。今後はこのJIP2006を利用して、規制が生産性に与える効果等の推計を実施していく予定であるが、その予備的な研究として、JIP2003、ミクロデータを使用して、規制緩和、IT化、資本のヴィンテージが産業、企業の生産性に与える効果の計測を実施した。 1.JIP2003のデータを使用して乾(2005)は、規模の経済と生産性の関係、Inui(2006)は規制緩和と生産性の関係について分析し、1990年代において生産性(TFP成長率)の低迷に需要要因の影響が無視しえないこと、非製造業のTFP成長率改善に規制緩和が寄与していることが確認された。乾(2006)はTFP成長率に大きな影響を与えるマークアップ率の変動を産業別に計測し、これが順循環的であることを確認した。また乾・権(2005)では、TFP成長率に関する既存論文をサーベイした。 2.ミクロデータを使用した研究ではNakanishi(2005)と中西(2006)でIT化の生産や生産要素に与える影響を計測し、IT化が生産の増大や労働の減少に寄与していることが確認された。徳井・乾・落合(2006)では企業の資本のヴィンテージ、組織資本が企業の生産性に重要な役割を果たすことが分かった。
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