本年度は持続可能な発展のために必要な環境政策手段、特に自発的手段、の研究に多くの時間を割いた。 まず、環境政策手段の分類を行った。その際、環境負荷を低減するという意図による政府の活動全般を環境政策と見て、その手段を環境政策手段とした。そのうち、政府以外の経済主体の行動を制御する政策手段の分類を行った。分類にあたっては、環境政策手段が環境負荷発生主体に与える負荷削減便益の種類に着目した。自発的アプローチが与える削減便益は、3つの種類が指摘されていることを踏まえつつ、固有の便益はより厳しいまたはより非効率的な代替的手段の導入の回避であることを指摘した。そして代替的手段の導入を脅しに環境負荷削減を迫る手段を新たに自発的手段と定義した。 具体的な自発的手段の有効性の検討においては、利潤最大化企業について、個別的および集団的なものを順に検討した。 個別的な自発的手段については、Unilateral Commitment、Negotiated Agreement、Public Voluntary Programのいずれの場合でも、追加的対策費用が、対策をとらずに代替的手段が導入された場合の追加的費用の主観的期待値より小さいこと、が有効性の条件であることを明らかにした。 集合的な自発的手段については、企業間の話し合いがないままでは、一企業だけで目標を達せられる場合を除き、どの企業も削減を行わず目標は達せられないことを明らかにした。特に、PVPについては、とくにこの議論が妥当する。UC、NAは、個別的な場合の条件に加え、集合的目標を達成する個別企業の削減量の組が存在する、が満たされる場合、それらの企業は話し合いを行い、削減量割当について合意、履行し、集合的目標を達成する可能性があること示した。ただし、合意への到達、履行も自動的ではないことを明らかにした。
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