研究概要 |
本研究においてはまず、持続可能な消費と生産の形態とは何か、について、技術と生活様式が鍵となること、消費に重点が置かれていること、などを明らかにした。次に、持続可能な発展のために必要な環境政策の手段として、直接規制、経済的手段、に次ぐ第3の手段として注目される自発的手段の日本の経験である公害防止協定の実態をアンケート調査の分析を通して明らかにした。そして、伝統的な産業公害問題は、かなりの程度において公害防止協定によって制御されていたこと、公害防止協定の主要な長所は、企業の新規立地と操業への住民理解の獲得能力と、企業の資力状況に対して規制を調整する柔軟性、であり、これらは公害防止協定の交渉、締結、実施の個別性に由来していること、等を明らかにした。次に、自発的手段の有効性の条件を理論的に検討し、個別的な自発的手段については,追加的対策費用が,対策をとらずに代替的手段が導入された場合の追加的費用の主観的期待値より小さいこと,が有効性の条件であることを明らかにした。一方、集合的な自発的手段については、各企業が上記条件を満たしつつ、さらに追加的な条件が必要であるため、自発的手段は、公害防止協定がそうであるように、個別的に適用した方が有効性が高いと考えられることを明らかにした。最後に、持続可能な社会の政策目標に関わる環境汚染・破壊の克服のための倫理について研究し、環境汚染・破壊の克服には公正・正義の論理が必要であることを明らかにした。さらに、通常経済学が仮定しているのとは異なり、制度的に認められた分析初期における財産権の分配は過去の不正義・不公正な行為により歪められており、その経済的帰結は不当であるが、その是正には倫理の訴求が可能であることを明らかにした。本研究は、当初は、各国の政策の実証的な国際比較を意図したが、それに至るまでの研究に予想よりも時間を要し、それには至らなかった。
|