本年度、グジャラート州で実施する労働調査の準備作業を中心に進めた。その具体的内容は大略次の3点である。 1 インドの労働・雇用に関する既存研究のサーベイと文献研究:この研究成果は次ページ記載の書評と文献レビューとしてまとめた。とくに後者では、この数年間に発表された関連文献を幅広く整理し、インドの雇用・労働問題の変化と現況を多面的に示した。取り上げたテーマは5点である。(1)「労働市場の変容」では総論的文献を中心に経済改革以降の労働市場の変化・趨勢を整理した。そして各論として、(2)「IT産業と雇用」で飛び地的な労働市場の実態を確認し、(3)「インフォーマル・セクター(IS)の労働者」でその増減に関する議論などを紹介した。また(4)「帰路に立つ労働運動」では自由化以降の労働運動の劣勢・後退に関する議論を再考。その上で(5)において、(1)〜(4)の議論のポイントを調査地グジャラート州の事例研究に基づき再考した。つまり、同州は経済成長と同時に所得貧困の削減を実現してきた一方、雇用問題の悪化が指摘されているが、この矛盾は、ISの労働条件の向上や女性の労働力化などによって説明できるのか、また、大量失業を生んできたアフマダーバードを抱えるグジャラート州を「労使協調」的な州と位置づけることは妥当かといった点で、これらの論点は本年度調査を踏まえて改めて取り上げ解明する。 2 調査予定地での調査準備作業:本年度調査のための調査員の手配、調査地の具体的な選定のための各地工業地帯の視察、協力要請工場に目処をつけるための関係機関訪問(商工会議所、各地の工業協会など)を行い、またアフマダーバードとデリーにおいて、平成19年度調査(予定)のための事前作業として、IT関連企業5社を訪問した。 3 現地でのマクロ・データと関連文献の収集:デリーとアフマダーバードで関連文献と統計資料を探索し収集した。
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