平成19年度は次の研究を実施した。1インドでの現場視察・聞き取り調査の実施、2インド関連資料・文献の収集、3調査データのコンピュータ入力とその分析、4最終報告書の執筆。 上記1と2の関連では、19年8月と20年3月にデリー、アフマダーバード、コルカタの3都市を訪ね、次のとおり現地調査を実施した。(1)労働市場制度を支える機関(複数の職業紹介所、職業訓練所)の視察と聞き取り調査、(2)スラム工業地区の視察、(3)インフォーマル・セクター事業所の集合地区における労働実態の視察と聞き取り調査、(4)前年度実施した(元)工場労働者子弟に関する補足調査(調査地の主要産業の一つで、多くの子弟が就業していたダイヤモンドの工場の視察、補足的な聞き取り調査)、(5)伝統的産業であるジュートの大規模工場の視察、(6)新興の躍進産業であるIT関連サービスの事業所視察、(7)経済特区の視察、等である。これらの現地視察と聞き取り調査は、インドの労働市場と労働環境の変化を総合的かつ多面的に理解・把握し、また前年度行ったミクロな現地実態調査の結果を分析する上で、きわめて有益であった。また、視察と聞き取り調査の合間を縫って文献収集(マクロデータ、書籍など)も精力的に行った。 上記3のデータ入力・解析の基本的作業は終了しており、現在、4の最終報告書の執筆を進めている。 今回の調査では、労働調査に協力してくれる企業の新規開拓が容易でないことを痛感した。しかし、経済改革後の労働市場の急速で多様な変化、ひいてはインドの貧困や格差の実態と将来を考えるには、マクロデータや文献研究のみに頼るのでなく、ミクロな現地実態調査に基づく研究がますます重要になっていることも再認識した。今後さらに研究を進めたい。
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