研究2年度目は、おもに以下の2つに絞って、研究を行った。 (1)日本における産業集積の研究では、バイオ産業を取り上げ、製造業主体の伝統的産業集積の形成メカニズム、その効果、及び、その過程における政策の役割と比較しながら、バイオを代表とするサイエンス型産業集積について研究を行った。その結果、サイエンス型産業はValue Chainにおける研究開発の重要性が非常に高いため、大学や公的研究施設のような科学的シーズのソースがある地域に存在することが産業集積に大きな役割を果たすことが明らかとなった。また、それとともに、インキュベーション施設の存在、及び、ベンチャービジネス立ち上げ初期に要するファンドの存在も欠かせないことが明らかとなった。ただし、企業立地と科学シーズのソースとなる大学所在地がすべてのケースで一致しているわけではなく、知的ネットワークの形成と地理的緊密性が必ずしも同一ではないことも明らかとなった。 (2)途上国の産業集積関連の研究では、中国とインドの台頭が外資主導で形成されてきたASEAN諸国(シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン)の産業集積にどのような影響が出うるのかについて、調査研究を行った。その結果、すでに産業の高度化・深化が進展しているシンガポール、マレーシア、タイについては、例えば中国とある程度、産業内分業が進展しており問題は少ないことがわかった。一方、中国やインドと産業構造が類似しているインドネシアやフィリピンにとっては、特に中国の台頭はこれら諸国の工業化、産業集積過程に大きな影響(悪影響)をもたらす可能性が存在することが明らかとなった。
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