「平成の大合併」と呼ばれる地方自治体の合併が進められている.合併の是非に関する議論が盛んに行われているが、多くの議論は近視眼的な合併のメリットとデメリットの議論に終始している。長期的なビジョンを踏まえた合併の是非について議論する地方政府は少ない。 本研究では、長期的なビジョンを踏まえた合併の議論をするにあたり、その政策手段として一般的に意識されている規模の経済ではなく、集積の経済に着目し、集積の経済をビジョンに取り入れた具体的な手法を研究する。東京一極集中が起こっているのは規模の経済のみならず、集積の経済の効果と考えられる。集積の経済における「地域特化の経済」、「都市化の経済」は理論的に解明されているが、その効果を合併された地方政府に応用し合併後における集積の経済の影響について検討した。 検討手法としてパソコンの性能向上により、その機能が充実したGISを利用し、デーは地域メッシュ統計を利用した。地域メッシュ統計は昭和45年から整備が始まり平成17年までのデータが公開されている。7つのパネルデータを比較することにより検討を行った。その結果次の3点が明らかとなった。 1.一点の都市部を中心に円形構造を持つ都市はその構造が安定的である。 2.一点の都市部を中心に円形構造を持つ都市は少子化及び高齢化が地域内に均一に発生する。 3.一点を中心とした円形の都市構造を持たない都市は都市構造が不安定で道路整備などの影響をあけて都市構造が変化しやすい。 以上の結果に対する論理的な説明は今後の課題である。また、分析が2都市と少ない点は考慮する必要がある。しかし、いわき市と郡山市は人口規模が同程度であり、昭和40年代初期に新産業都市の指定を受け、経済的背景はかなり似ている。このことを考慮すればこの比較による結果は有意であると考えられる。
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