17年度の研究実施計画は以下の3点であった。 a.シミュレーションによる価格変動等の確率分布の導出 b.外国為替市場の高頻度データを用いたモデルの検証 c.外為市場の「確率構造モデル」の拡張と関連するテーマへの応用。 例えば、価格予想の違いを利用する形でのbid/askの決定モデルの作成。 実績は次のようなものであった。 a.ブローカー経由外為市場のシミューレーションの結果、一部パラメーターの価格変動率に対する効果を考慮する必要があることに気付いた。結果は平成17年12月に「日本金融・証券計量・工学学会」2005冬季大会にて書き直した論文を発表。 b.11月に研究費が追加配分される通知されてから、外国為替の詳細なデータの配信サービスの契約を進めた。現在高頻度データの収集中である。 c.論文を平成18年4月にアメリカ東部ファイナンス学会で発表する予定。 論文の概要:外為ディーラーの買値と売値の乖離幅は価格変動が大きい時期には、拡大している。この乖離幅変化は、在庫から発生しうるキャピタルロスの補填するためという理由だけでなく、「市場参加者の価格予想の非同質性を利用する形で拡大する」ことを示そうとするものである。この度、従来から作成中の論文を次のように改良することができた。 価格予想の非同質性を表現するために、市場参加者が予想する相場の時間経路上の「極値」がある確率分布関数に従ってばらついているものとする。ここでの「極値」とは当面の最高低値である。この度の改善点は「極値」そのものではなく、それが「表現する確率」を確率変数として取り扱うことである。ここでの「表現する確率」とは、「極値」がディーラーの間で「それより以下がxパーセント」に位置するというものである。「表現する確率」は一様分布しており、煩雑な議論を回避して、価格予想モデルが作成可能となった。
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