今年度は、財政政策の中でも中心的な政策手段である租税政策を検討する中で、発展途上国で深刻な失業問題、そして、世界的に問題となっている環境問題を融合し、その解決手段を国際的な財政政策の中に求め、政策手段の設計を行った。その成果のひとつは、Nova Science Publishersから刊行予定の研究書の1章に所収予定である。 以下は今年度の課題研究の主要成果である。 1 租税政策を中心に失業問題、特に、失業給付の正当性について検証した。そして、国際的な見地から発展途上国における問題として考察し、その政策実施の可能性について検証した。 2 環境問題の対策を最適課税論的なピグー租税・補助金政策の見地、および租税改革の見地から検討した。さらに国際的な環境対策の問題として考察し、その政策実施の可能性について検証した。 3 租税政策中心の財政政策の側面から、失業問題・環境問題を融合させる事を検討した。そこで、両問題を同時に解決できる国際的な政策の提言、および実施可能性について検証した。具体的には、ピグー課税による外部不経済を生み出す財への増税により、国際的な経済不効率を是正し、さらにこの増収をもとに、労働課税の減税が可能となれば、労働インセンティブの創出効果が期待され、二重配当効果の可能性が検証され、失業問題も同時に対策可能であることを示した。 今後は、より国際的に融合した財政政策により失業問題と環境問題を解決できる政策を提言し、その政策効果について理論的・実証的に検証してゆく予定である。
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