研究課題
基盤研究(C)
今日、多くの先進国において、福祉は憲法上または法律上の不可欠の政府サービスの一つである。しかし、現実には各国の公共部門による社会保障の範囲やサービスの水準、およびその基盤となる財政制度の形態は様々であり、特に日本においては、本来地方団体が福祉等の社会サービスを行うことを想定してその財源保障を主たる目的として成立した地方交付税制度が実際には多くが公共投資の財源となる等、制度が本来の目的とは異なった機能を果たす例が見られる。かかる制度と現実のギャップの説明には、経済制度や組織の発生を理論的に解明することを主眼としてきた制度派経済学が大きな役割を果たすと考えられる。よって、本研究の目的は、財政制度が本来の目的とは異なった機能を果たす現象を、制度派経済学の視点から解明することである。本研究では、第一に制度派経済学における国家の役割について詳細な検討を行い、その結果、近年の主流である新制度派経済学ではなく、19世紀以来の伝統を持つ、ドイツおよびオーストリアの経済学、財政学が改めて考察されねばならないことが分かった。第二に、福祉サービスの提供にあたっては、国家のみならず、地方団体や非営利組織等の中間団体が重要な役割を果たすが、本研究では社会保険や公的扶助等の制度の形成、また福祉サービスの現状について日本とドイツにおけるこれらの団体の比較を行った。その結果、日本においては中間団体が中央政府の特定補助金に強く依存しているのに対して、ドイツにおいては一般補助金中心という意味での財政的独立性と、運営における自治を備えた組織が自発的に形成されるという特徴が見られることが分かった。そして、かかる違いをもたらす根本的な要因として福祉における「補完性原理」の理念の有無が関係していることが分かった。
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NEO Zaisei Kenkyukai (ed.) Atarashii Jishu-Zaigen-ron no Tankyu (Investiga- tion of New Thoeory for Independent Fiscal Resources)
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