研究概要 |
地方分権が進められている現状で税源移譲が議論されている。その際の税源移譲の大きな候補の1つとして消費税がある。所得税が一部住民税の財源として移譲されようとしているのと同じく,消費税も地方消費税の財源として一部移譲することを考えることができるが,所得税の税源移譲と同じく,消費税を全廃するのではなく国税としての消費税を徴収しながら地方税としての地方消費税を同時に徴収することを考えることは可能である。 今年度の研究では,国税としての消費税と地方税としての地方消費税を同時に課税するときに考慮しなければならない点を消費税の付加価値税としての性格を踏まえて指摘することを目的にした。とりわけ地方間の取引で仕向地主義課税を実現できるかどうかに焦点を当て,最近提案されたCVATについてこの点がどう取り扱われているかを詳細に検討した。 さらに財政面の地方自治を実現するものとしての地方消費課税の備えるべき性格という側面から地方消費税の検討を行った。具体的には課税ベースの決定,税率の決定,税の独自徴収などを課税自主権の構成要素として捉えて,これらをどれだけ満たすことができるかによって自主権の度合いを測るものと考えた。最終的に課税自主権と消費課税の満たすべき要件をすべて備えた地方消費課税制度を設計するのは無理であることを明らかにした。したがって次年度の研究では地方消費税の備えるべき要件を課税自主権との関係で絞り込んだ上で,独自課税の候補となるべき制度の設計を模索することが主目的となる。
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