研究概要 |
本研究では国が消費税を徴収し続ける一方で地方がそれとは独立に地方消費税を徴収することを考察対象とし,地方独自で消費税を課すときに各地方独自の税率設定が可能かどうかを考察するのを研究の第1目的とし,地方消費税において地方独自で税率の決定を含めて課税するときに仕向地主義課税が実現可能かどうかを検討するのを研究の第2目的とした。 その結果,1)税率の決定権,2)地方独自での税の徴収,3)消費地課税(仕向地主義課税)の実現,4)地域間税調整の不要性,5)税収の漏れを起こさない,の5つの要件をすべて満たすような地方消費税システムは存在しないことを初めて明らかにした。したがって,税率の独自決定権を最優先課題と考えるとき,他の要件のどれかをあきらめなければならないことを明らかにした。具体的には地方独自での税徴収を断念することが考えられる。一連の研究の成果を玉岡(2006)としてまとめた。 また研究の後半過程で日本の消費税の特質を税額控除法か仕入高控除法かという付加価値税の徴収法から整理し,消費税が税額控除法を採用していることを正確に指摘した上で,消費税が将来複数税率化に向かうときの課題を明らかにした(玉岡(2007))。通説とはまったく反対にインボイスを伴わない現行制度のままで複数税率化が可能であることを明らかにした。また,国税消費税が複数税率化に向かうときに地方消費税の税率決定権を含めた独自課税の問題をどのように考えるかが新たな研究課題として浮き彫りにされた。
|