初年度は、当初計画どおり、EFCAモデルの再構築・普遍化と英文ペーパー化、アジア金融市場とアジア域内資金フローに関する基礎研究等に充てられた。具体的には、(1)EFCAモデルのFCAモデルへの一般化と英文化、(2)アジア域内資金フローと金融市場・為替市場統計の整備とアジア通貨協力の諸提案の収集整理、(3)バックグラウンド研究、という三つの準備作業を並行して進めた。(1)については、これまで研究分担者(田中素香教授)のもとで構築してきた「欧州金融・通貨圏(EFCA)」理論を、「アジア統合の不可分の要素」という視点から再構築・普遍化を行い、その英文化の作業を進めた。研究代表者(岩田)は、以前の科学研究費研究(国際共同研究)を通じて英文翻訳を終えている「投資通貨の多様化」に加え、今回は「民間ECUの発展」を組み込んで「欧州金融・通貨圏(European Financial and Currency Area)」全体を包括的・体系的にまとめた英文ペーパーを執筆し、12月10日のアジア太平洋EU学会(European Union Studies Association - Asia Pacific(EUSA-AP)第3回大会にてフルペーパー;Formation of Regional Financial and Currency Area : Some Lessons from Europe to Asiaとして公刊し、同時に研究報告を行った。また研究分担者(田中)は、アジア太平洋EU学会第3回大会に日本EU学会会長として参画し、フルペーパー;Monetary Cooperation in Europe and East Asiaを公表・報告するなど主導的な役割を果たした。(2)については、アジア債券市場関係のイニシアティブ(ABMIおよびABF)の進展に鑑み、関連文献の体系的収集を行い、またADB(アジア開発銀行)のホームページなどを通じてAsia Bond Monitorや関連データの収集を行った。(3)のバックグラウンド研究については、現在研究代表者と分担者が編者となって編集を進めている『現代国際金融』講座の原稿検討を通じて、経常収支の世界的不均衡とドル問題に対するアジアの対応に関して論点整理を代表者と分担者との間で行った。その成果は平成18年度に公刊される。
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