本研究の最終年度である平成19年度は、以下の研究活動を行なった。第1に、証券経済学会第67回全国大会の共通論題「証券取引所の世界的再編成」のパネラーとして「欧州からみた取引所の世界的再編成」について報告と討論を行ない、欧州金融通貨圏(EFCA)論を踏まえてアジアにおける株式市場連携のための制度デザイン(母国市場育成と域内リンク)に関する提案を行なった。第2に、大分EU協会20周年記念シンポジウム「EUEO-ACUユーロの意義とアジア通貨単位の可能性」(6月於大分大学)で「ユーロ導入から学ぶACUの可能性」について講演とディスカッションを行ない、アジアにおける為替相場安定のための基準として公的ACUの有効性、民間ACUの可能性を示す一方、通貨統合については、(1)経済発展段階の近似化、(2)経済統合の進化などの諸条件があり、ASEANなど地域を限定して展望する必要があることを示した。第3に、EUIJ関西の夏季合宿(9月於神戸大学)において「ユーロの国際的側面」について研究報告とディスカッションを行い、ドルの信認低下が進むなか、EFCAを継承したユーロ圏は、グローバルなレベルでドル圏を代替する状況にはないものの、経常収支の安定という点で際立っており周辺地域に着実に拡大しつつあることを示した。第4に、研究分担者(田中)とともに公刊の準備を進めてきた国際金融シリーズ(有斐閣)の第3分冊『現代国際金融』を刊行した(平成20年2月)。 取り纏めでは平成17年度以降実施してきた一連の研究成果を踏まえて、FCA(金融・通貨圏)研究の独自の視点からアジア金融・通貨圏の意義と実現可能性に関して一貫した評価を下した。
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