研究課題
基盤研究(C)
マクロ供給関数を持つケインジアン・モデルの長期均衡では貨幣数量説と自然失業率仮説が成立するので、マネタリストとケインジアンの区別は長期的には存在せず、短期・中期の相異であるというのが通説である。真の「マネタリスト・モデル」は、物価が数量方程式で決定され、マクロ経済固有の変数である流通速度が独立に定式化されるモデルであるという観点から、独自に「マネタリスト・モデル」を定式化しマクロ経済の安定性について検討した。その結果、3つの結論を得た。1.短期の市場均衡が安定であるためには、流通速度の逆数の値とその利子率感応性が相対的に小さいことが必要となる。2.短期、中期、長期いずれにおいても貨幣数量説が成立する。長期均衡での自然失業率の成立は保証されない。3.長期均衡の安定性には、流通速度の逆数が一定の下限を超えていることが必要である。下限は貯蓄率、貨幣需要の予想インフレ率感応性の減少関数であり、投資の利子率感応性の増加関数である。また、フィナンシャルアクセラレーター仮説に関する理論分析から以下の結論を導出した。総信用量のマクロ経済活動との相関性は、家計がどのような資産選択行動をしているかに依存する。家計の資産選択行動において、相対的危険回避度が富の減少関数であるならば、総信用量の大きな変化を通じてマクロ経済活動も大きく変動することが明らかとなった。また危険回避度が可変的あることも実証分析を通じて確認された。このことは将来の金融政策運営のあり方についての重要な示唆を与えるものと特徴づけることができる。
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社会科学 第81号
ページ: 16-42
Syakai Kagaku No.81
同志社商学 第59巻3号
ページ: 19-46
同志社商学 第59巻1号
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Doshisha Shogaku No.59, Vo3.3
Doshisha Shogaku No.59, Vol.1