平成17年度における研究成果に関しては、次の3点があげられる。すなわち、1)欧州の経済状況の検討、2)ユーロ圏での金融・財政政策の最適枠組みに関する理論的研究、3)その枠組みに関する実証のパイロット研究である。1)に関しては、ベルギー・ブリュッセル、ドイツ・フランクフルトへの出張により、欧州委員会ならびに欧州中央銀行でのヒアリングを行い、現在の経済政策に関する考え方と欧州経済の現状を調査した。それにより、今後の理論モデルの構築ならびにユーロ圏での金融・財政政策の最適な枠組みを、具体的に提言する際の現状の把握や問題点を明らかにすることができた。 2)に関しては、一つの中央銀行と二つの財政当局をプレイヤーとして想定した、ゲーム理論を応用したパイロット的なオリジナルのモデルを作成し、本学・商学会発行のワーキング・ペーパーとしてまとめている。また、安定成長協定の各国経済に与える影響を考察するための理論モデルを改良して、本学部発行のKansai University of Business and Commerceに掲載した。 3)に関しては、実証モデルのパイロットとして、欧州での財政政策効果を検証する研究を行った。具体的にはユーロ参加各国とユーロ域全体の鉱工業生産指数、インフレ率、政府消費の3変数を用いた構造VARモデルを用いて、政府支出ショックが生産およびインフレ率にどのような影響を、与えたかを検証した。それにより、各国に相違はあるものの財政政策はある程度の生産上昇効果を持つことが認められた。その成果は、本学・商学会発行の関西大学商学論集に掲載した。 本年度の研究では、以上のような研究成果をあげることができた。
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