標記テーマにつき、村本はリバース・モーゲジの理論的・実証的研究を行なった。とくに、リバース・モーゲジの本来の姿である「住み続け型リバース・モーゲジ」のほか、「住み替え型リバース・モーゲジ」について考察を行ない、研究論文を作成した。その際、生命保険文化センターの2004年調査を利用し、ロジット分析を行なって、住み替え型リバース・モーゲジに一定の需要のあることをファクト・ファインドした点は、従来になかった研究成果である。また、この分野では国土交通省が住宅金融普及協会に委託している「住宅・金融フォーラム」のメンバーとして各種活動を行なっているが、その中で札幌でのフォーラムでの基調報告「住宅と証券化」については『住宅・金融フォーラム』(第2号、2006年10月)に掲載された。またシンポジウム「豊かな高齢社会に向けての新しい居住システムと金融」(2006年11月17日開催)にパネラーとして参加し、人口減少社会での住宅金融としてのリバース・モーゲジがライフサイクル理論を実現する上で重要な要素となることを指摘したが、その成果は、『住宅金融月報』No.661(2007年2月。22ページ)に掲載されている。 吉川は年収階級別に相対的危険回避度を計測し、年収が多い階級ほど危険資産選好が強いという結果を得た。一方、住宅ローン利用者のデータ(住宅金融公庫「公庫融資利用者調査」)の分析から、年収が多い階級ほど住宅ローン返済負担率が低いとの結果を得た。したがって、住宅ローンという住宅保有のため負債をもった世帯は、年収の多い世帯ほど負債返済のための負担が小さく、株式などの危険資産を保有する際に一定の額の資金が必要であると考えれば、負債返済の負担が小さい年収の多い世帯ほど危険資産選好が強くなることを説明できると結論づけた。
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