本研究は3つのプロジェクトから構成されている。第一は、ゼネラル・エレクトリック社において中間管理者層がどのように形成されてきたのか、彼らは企業内でどのような機能を果たしていたのか、彼らはどのようにリクルートされ、どのように教育され、どのようなキャリア・パスをたどったのか、彼らは日常的にどのような生活を送り、どのような意識を持っていたのか、以上の点について、中間管理者層の形成がはっきり見えてきた1920年代から、その確立期である1950年代までの時期について明らかにすることである。第二は、デュポン社について、同様の諸点を同じ時期について明らかにすることである。第三は、アメリカ巨大企業における中間管理者層の形成に学校教育とりわけビジネス・スクールがどのような役割を果たしたのかを明らかにすることである。具体的には、中間管理者層の育成を目的として設立されたペンシルバニア大学ウォートン・スクールがどのようにしてその役割を果たしたのかを明らかにすることである。 本年度はゼネラル・エレクトリック社の職員録より作成されたデータベースにもとづいて、部門別、機能別の中間管理者層の動向を把握することによって、彼らがどのようにして形成され、どのようなキャリア・パスを歩んだのかを明らかにした。この成果は経営史学会全国大会で報告された。また、取締役会の議事録などを利用して、中間管理者層についての人事政策がどのように形成されてきたかを明らかにする作業が進められた。また、有名なBlue Booksをはじめとする社内教育用の教材の分析を通じて、中間管理者層の教育の実態と、求められた管理者像を明らかにすることが試みられた。さらに、取締役、役員の経歴に関するデータベースなどを利用して学歴、リクルートと昇進の実態を把握し、それらは、経営学会全国大会および政治経済学・経済史学会全国大会での報告の一部をなした。デュポン社については、膨大な部門別の組織図にもとづいてゼネラル・エレクトリック社と同様のデーターベースを作成するための準備作業を行った。ウォートン・スクールについては、すでに収集済みのウォートン・スクールの卒業生の個人記録の整理と予備的分析を行った。 また、Schenectady Museumとペンシルバニア大学で以上の作業に必要な資料を収集した。
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