1、1950年代に推進された「農業の集団化」の過程における水利灌漑事業に関する先行研究を、愛知県立大学等で収集した。 2、河北省および山東省の地方志から水利灌漑システムに関するデータを抽出し、黄河下流域での水利政策を、国家レベルの水利事業と、地方レベルの水利対策に分類して、その相互比較から文献資料に描かれた「水利共同体」の実態像を検討した。 3、戦前期の日本側調査機関による華北農村調査の成果の一つである『中国農村慣行調査』において、水利灌漑システムの検討対象とされた農村が所属した山東省平原県と天津市静海県、および河北省〓台市で、当該地の水利灌漑システムの歴史的変遷状況について関係者へのインタビューを含めて関連資料を収集した。 4、なお河北省けい台市での日本人研究者の受け入れは、戦後では研究代表者が始めてであった。調査時の中国農村全般が、「靖国問題」もあってか、外国人の調査については、なかなか協力を得られにくい状況だったが、〓台市での調査には、同行していただいた中国南開大学歴史学院助教授で現在東京大学大学院法学研究科客員研究員の祁建民氏と、先発隊として早目に現地に赴いていたシーデーピージャパン株式会社技術部所属の弭麗峰女史の協力を得て、当初の計画通りの調査ができた。
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