1、1950年代に推進された「農業の集団化」の過程における水利灌漑事業に関する先行研究を、東洋文庫および滋賀大学経済経営研究所等で収集した。 2、山西省の地方志から、1950年代から現代に至る水利灌漑システムに関するデータを抽出して、黄河下流域での水利政策および「水利共同体」の実態像を検討し、農業の集団化過程における水利政策の重要性を確認した。 3、満鉄調査部を中心とする、戦前期の日本側調査機関による華北農村調査において、水利灌漑システムの検討対象とされた農村が所属した山西省太原市近郊で、当該地の水利灌漑システムの歴史的変遷状況について、関係者へのインタビューを含めて関連資料を収集した。さらに改革開放政策の下で、伝統的結合論理として宗族的結合と地縁的結合の重要性が、地域住民に実態として認識されていることが理解できた。 4、なお2007年12月の中国での現地調査では、1950年代の農村レベルでの水利灌漑政策の実態を物語る一次資料を収集している山西大学中国社会史研究中心のスッタフの協力を得て、太原市近郊農村である黄陵村および小店村のみならず、四社五村といわれる霍州市・洪洞県境の山間部地域農村である義旺村等における水利の現状も含めて、当初の計画通りの調査ができた。
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