本年度は、研究計画に従い、主として以下の作業を行った。(1)スウェーデンにおける1976年の共同決定法から1980年代にかけての企業における共同決定制度の定着過程に注目し、研究文献を収集し研究史を整理した。これにより、ボルボにおける企業委員会制から共同決定制への移行をスウェーデン全体の展開の中に位置づけを試みた。(2)平成19年3月24日から4月10日まで及び平成20年8月18日から9月2日までと2回スウェーデンに出張した。そこでは1970年代の企業委員会制度についての史料収集を補足するため、イェーテボリィのボルボ文書館を訪れて社内報・事業報告書・内部文書を閲覧し、ストックホルムの労働運動文書館を訪れて労働組合運動中央組織(LO)の企業委員会関係の文書を閲覧した。(3)イェーテボリィでは、1970年代にボルボ企業委員会の運営に携わった者3人に聞き取りを行い、企業委員会制から共同決定制への移行の状況を尋ねた。(4)ボルボの企業委員会の成立および展開過程を中央組織レベルの労使関係の展開との相互関係の中に位置づける試論を、政治経済学・経済史学会の福祉社会研究フォーラムで報告した。なお、残念ながら研究成果をなお公刊しえていないが、ボルボの企業委員会に叙述の中心の一つを置き、成立から今日に至るまでのボルボ社の歴史を見ることを目的とした著書『ボルボとスウェーデン・モデル(仮称)』の草稿を書き終え、現在、出版交渉中である。さらに、研究成果報告書をもとに論文を書き、『経済学論集(東京大学)』に掲載する予定である。
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