本研究は、研究代表者の社会保険を軸心とした第二帝政期以降現代にいたるドイツ社会国家史研究をまとめあげることを目的とし、とりわけ研究の残余部分である両大戦間期の社会保障政策に重点を置いたものである。それゆえ当初の計画では本年度は同時期の(すでに立ち入って分析を行っている失業保険以外の)社会保険の展開の分析を中心に研究を進める予定であったが、結果的には従来からの経緯により、先に第二次大戦後期についての研究をひとまず完成させることとした。ドイツ・フライブルク大学、ケルン大学、イギリス国立公文書館(Public Record Office)などで資料を収集しつつ、また既収集のドイツ連邦公文書館(Bundesarchiv)、連邦議会公文書館、その他財団文書館所蔵の一次資料を用いつつ、同時期西独のネオリベラルの社会的市場経済、社会民主主義の市場経済秩序思想と社会保険の運用の関わりを当時のドイツ経済・社会の構造や基盤、また占領軍政との係わりなども考慮に入れつつ分析し、かつまた東独社会主義体制下の社会保険の展開についても考究した。その成果は本報告書第11項に記載の論文に反映されている。本年度はさらに1957年年金改革の審議過程と各経済・社会層や政治勢力、アカデミズム等の経済秩序観に焦点を絞った研究、並びに社会主義体制下の社会給付のあり方をより掘り下げた研究も進行させ、その成果も公刊をすべく現在準備を進めている。次年度は本格的にヴァイマール期およびナチス期社会保険の展開の分析を行なっていく予定であり、必要となる一次資料の一部はドイツの公文書館などからすでに収集している。研究の進行に伴ない、問題点の解明や実証上必要となる一次資料をさらに集めつつ、ドイツ社会国家史研究をさらに進捗させていく意向である。
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