前年度に引き続き、ドイツの社会保険を中心とする社会保障政策の制度形成およびその運用のあり方と、時々の経済秩序との関係を経済史の観点から分析した。第二帝政期からヴァイマール期、大不況期およびナチス期、連邦共和国期にいたるそれぞれの時期について、それぞれの体制独自の市場経済のあり方と社会保険の実際の運用や改編との連関性を詳細に調査し、市場経済下の社会国家的展開の論理を求め、ドイツ型市場経済の展開と社会国家発展の関係性を問うかたちでのドイツ社会保険通史となる単行書の原稿を完成させた。 その間には、2006年度の政治経済学・経済史学会学術大会の共通論題基調報告として発表した内容を、当日の議論を踏まえ、またさらなる考察を加えつつまとめ、第11欄に記載の論文として公表した。 また単行書の実際の執筆の中で明らかになった(主にヴァイマール期およびナチス期に関する)事実関係および実証上の問題を調査すべく、ドイツ連邦公文書館での資料調査も行った。単行書は2008年度内の発刊をめざしてなおも作業を続行中である。 この間さらに、国内の福祉国家形成史研究者との議論、意見交換を密にし、単行書の一層の改善に努めた。とくに政治経済学・経済史学会の福祉社会研究フォーラムにおいて集中的に議論を深め、2007年12月15日には同フォーラム研究会(於・東京大学・経済学研究科)にて「ドイツ、ヴァイマール共和国における社会保険の展開」と題する研究報告を行った。
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