研究課題
基盤研究(C)
本研究は、戦後日本綿業の復興過程を新しい一次資料を駆使して描くことを課題にしている。戦後の日本綿業の復興については、これまでいくつかの研究が発表されているが、業界団体内部の一次資料による分析は少ない。初年度は以下の三種の資料整理をすすめた。「日本綿糸布輸出組合関係文書」、「三輪常次郎関係文書」、「田和安夫関係文書」を整理・判読して、戦後日本綿業のダイナミックな展開を考察する準備期間にあてた。そして、とくに、考察の対象は1950-60年代とする。日本綿糸布輸出組合は1934年に結成された対インド綿糸布輸出調整団体を基盤にしたもので、輸出規制を通して、対外通商摩擦の緩和を企図した半官半民業界団体であった。戦後は最大の輸出市場であったアメリカ合衆国との通商調整機関として政治経済的な役割を担った。同文書を通して通産省と商社側からみた日米関係を考察したい。日本綿糸布輸出組合関係資料については「資料目録」を作成中である。田和安夫氏は、戦後の日本紡績協会の専務理事を勤めた重要人物であり、同氏の残された執務文書は、戦後の日本綿業の復興と対米通商摩擦についての貴重な資料となっている。すでに故人となられたが、生前にインタビューを試みた時に、膨大な個人用執務文書の存在を教えていただいた。これまで十分に検討されてこなかった戦後の日米通商摩擦問題について、紡績業界団体から観た状況把握を可能にするものである。三輪常次郎は、愛知県名古屋市にて、綿布問屋として経営を開始した「服部商店」の経営に従事した経営者であった。明治中期に服部兼三郎によって創業された同商店は、その後継者の三輪によって拡大し、問屋業が織布生産に多角化し、あわせて加工綿布生産に積極的に乗り出した。一企業の視点から戦後の日米関係を考察する。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
現代中国研究 16号
ページ: 2-6
Japan, China and the Growth of the Asian International Economy 1850-1949
ページ: 49-72
在華紡と中国社会
ページ: 3-32