15〜17世紀ネーデルラント穀物流通中心の遷移が地域の市場化に与えた影響を定量的に分析するための価格データの整理および研究地域と時代を拡大したことに合わせた関連研究文献の収集、学説整理を中心に研究を進めた。これまで申請者が史料調査により収集してきた15〜16世紀の会計帳簿に記載された諸記録の定性的要因を組み入れたデータベースの作成とともに補足的資料収集の為の準備を進め、その打合せを平成17年11月の訪欧時に、研究協力者であるヘント大学E.トゥーン教授と行った。また、この訪欧においては、17世紀ヨーロッパの流通全体におけるオランダの位置に関わる情報の中心性と物流の中心性の乖離の問題について研究協力者であるアムステルダム大学のレスガー助教授と今後の共同研究の進め方について討議した。また、平成18年3月の訪米においてはカリフォルニア大学のドゥ・フリース教授と穀物流通史研究をオランダ経済史全体の中にいかに位置づけるかについて討議し、(1)中心都市における広域流通にたずさわる商人間取引の場としての取引所の成立がネーデルラントの多元的穀物流通構造にどのような変化をもたらしたか。(2)穀物価格広域流通する穀物に関する取引所の需給関係と中心都市、中心都市を有する地域の需給関係との連関が価格動向にどのように反映されたか。(3)多元的流通構造を有する穀物と単一的流通構造をもつ特産財などの他の財との価格決定メカニズムがどのように異なるか。を分析するためのデータ作成および基礎的研究を進め、その成果の一部は、15世紀以降の全欧的な価格上昇と地域の市場化に関する論文として平成18年7月刊行の「国民経済雑誌」に掲載することとなっている。
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