研究代表者・矢後は、研究期間の初年度にあたり、研究課題に係る文献のサーベイをおこなった。国際決済銀行(BIS)、国際通貨基金(IMF)等にかかわる研究文献を通観し、従来の成果、および残された問題点を整理した。とりわけ、フランスの戦後経済運営と国際金融システムとの関連に重要な論点がみいだされた。これらの検討の成果の一端は、『史学雑誌』にサーベイ論文として掲載された。 また、研究課題への接近方法について、銀行家、政策担当者などの政策判断の、その社会的背景を検討する、というアプローチに想到し、集合的伝記研究、いわゆるプロソポグラフィーの手法について考察した。この手法を日本の銀行家集団に応用した論文を佐藤政則氏(麗澤大学教授)と共同で仏語で執筆した。この論文はフランスの学会誌に掲載された。 さらに、当初計画に展望されていたアジアの通貨・金融システムと国際金融機関とのかかわりについては、「アジアにおける国際通貨・金融協力」という学会報告を英文で準備した。この報告は、今年度末から来年度初にかけてイギリス・レディング大学で開催される英国経済史学会にて、セッション報告として報告許諾を得た。報告は、4月1日に発表される予定である。 以上のサーベイ、方法論、そして実証研究を経て、初年度の研究計画をおおむね当初予定のとおりに達成された。来年度以降は、変動相場制の機能面を中心に、さらに実証研究を推進する予定である。 なお、新潟大学で開催された政治経済学・経済史学会大会に参加し、関連分野の報告について質疑を担当した。
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