研究概要 |
平成18年度まで継続的に続けてきた資料調査の成果である、収集企業および経済団体資料を整理し、アジア進出日本企業データベースの作成を行なった。また、このデータベースを利用して、旧満洲における日本企業の事業活動を産業構造、企業家ネットワーク、メディア産業の観点から研究を進めた。 産業構造分析の観点から化学工業、窯業などの産業部門について検討を加え、満鉄を筆頭とする国策的企業と民間企業との技術、資本、役員の相互依存性と国策的企業の主導性、などの特質を見出し得た。 企業家ネットワークに関しては、7,000社以上の満洲地場法人企業の役員、出資構成とこれらの企業の満洲地域における地理的存在状況を中心に検討加えた。この結果、満洲における地域性に規定された企業家ネットワークの存在を確認し得た。こうしたネットワークは産業連関性、事業基盤の地域性、満鉄・満洲重工業開発など国策会社との資本系列性などによる重層的な構造にあったことが明らかになった。 経済ネットワークの形成に当該地域におけるメディアの存在とその発展が重要な基盤になったことは想像に難くない。その点を検討するために満洲における日系メディアのあり方について分析を加えた。満洲におけるメディアは新聞・映画・出版・印刷などの部門で相対的に中小規模の多数の企業により担われ、多様性を有する情報媒体であった。しかし、満洲国成立後は、そうした多様性を特質とするメディア構造は再編され、国策的な巨大メディア事業による情報統制が進展した。 このように本研究では、旧満洲を中心に日本人経済ネットワークの形成とその特質について分析を進めた。本研究により日本のアジア地域に対する経済的進出の歴史的様相の一端を明らかにしえたと思われる。
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