第2次大戦後繊維統制撤廃後の1950年代から80年代至る日本の衣料品(洋服)分野において、コモディティ(差別化されていない商品)からブランドへ転換したこと、ブランドを基本単位とした企画・生産・卸・小売が形成されていったことを歴史的に明らかにする作業を行っている。 ブランド研究は、これまで企業ないしは事業部門の戦略的な意思決定の分析枠組みを提示する視点から、一時点におけるブランドのアイデンティティとイメージ、コンテキスト分析、ブランド間の関係とその役割を対象としてきた。本研究による歴史的なブランドの生成分析は以下の点を明らかにしている。 すなわち、(1)コモディティからブランドへの転換が流通構造の変革と手を携えて進展すること、(2)ブランドは製品レベルにとどまらず、小売レベルをも含めた垂直的な関係を包摂ないしは再編するものとなること、(3)ブランドの製品・小売レベルの一体的な展開が製造卸と百貨店との取引関係の変化を引き起こすことである。ブランドと小売との関係の歴史的な生成を示し、かつブランド概念を流通との関連において豊富化している。 成果の発表は、日本流通学会関東部会にて、2006年5月13日(土)に行っている。テーマ名は、「製品ブランドから製品・小売りブランドへの転換-1970年代の有力アパレルメーカーを素材として-」である。 1960-80年代における有力アパレルメーカーと百貨店との取引制度の変化は、買取契約から委託契約、そして消化取引へと移行していったが、その移行の論理を、アパレルメーカー側、百貨店側双方の視点から考察しつつ、その取引制度の移行が、製品とショップの一体的な展開によるブランド構築を加速させたことを明らかにしつつある。
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