研究課題
基盤研究(C)
本年度は、まずはライセンス・ビジネスの実態の調査と事例の収集に努めた。ライセンス・ビジネスに関しては、知的財産権の専門家が著した解説書が数冊あるだけで、その多くは、実務家の頭の中に経験やノウハウとして蓄積されたままである。こうした知識を掘り起こし、体系的に整理することが研究の第一歩になる。そのため、本年度は、職務発明に対する相当の対価について、ライセンス・ビジネスとの関連で研究を行った。特許法35条に定める職務発明に対する相当の対価(以下、「相当対価」)については、同条の法解釈から一義的に導き出すことは困難である。そのため本研究では、経営学の立場から、実際の企業行動と市場取引に関する四つの視点から検討を加えることにした。事例として最初に取り上げたのは「青色LED訴訟」である。そこで、特許の経済的価値と相当対価について、実際の企業行動と市場取引に関する次の四つの経営学的視点から検討を加えた:(1)ライセンス・ビジネスの実態を踏まえた特許権の金銭的価値、(2)発明者である研究者・技術者自らがリスクを負担して起業した場合の創業者利益、(3)経営戦略論のリソース・ベース理論に代表される視点、(4)モチベーション理論から見た金銭的報酬の効果。以上の経営学的視点から考察すると、2004年1月30日の東京地裁判決の600億円と比して、東京高裁で2005年1月11日に成立した和解額1000万円程度の方がはるかに妥当であるといえる。こうした研究成果は、日本知財学会の2005年秋季シンポジウムで報告されるとともに、論文「知的財産とインセンティブ」としてまとめられ、『日本知財学会誌』に発表されている。
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CSR「働きがい」を束ねる経営
ページ: 103-117
Annals of Business Administrative Science Vol.4,No.2
ページ: 9-20
日本知財学会誌 Vol.2,No.1
ページ: 43-54
日本のモノづくり 58の論点-持続的繁栄を築く思想-
ページ: 146-151