研究課題
発明には研究開発の成果としてナイーブにイメージされている「内発型」の発明だけではなく、それとは別の要因や文脈で行われている「非内発型」の発明がある。貴志・高橋(2008)は、企業による特許の取得が内発型の発明にとどまらないことを米国の半導体特許データから明らかにした。このように、いわゆる発明全般から内発型の発明を分離し、残った非内発型の発明に焦点を当てた場合には、科学的・技術的視点とはまったく異なるライセンス・ビジネス(あるいはライセンシング・ビジネス)の視点からの分析が、発明、特許出願といった企業行動をより自然に説明することができる。また貴志・高橋(2008)では、期間当りの特許数が増加すると特許の自己引用率が上昇し、組織における既存のリソース/技術能力から受ける制約が強くなることも示しているが、実際、開発スピードの速い半導体技術の場合、研究開発の方向性は既存の技術ポジションに大きく依存することが実証されている。つまり「内発型」の発明に関しては、技術革新のスピードが速い場合には、自社内のリソースが決定的に重要になってくる。このことは同時に、技術革新のスピードが比較的遅い場合には、組織自身のリソース/技術能力よりも、埋め込まれているネットワークの制約を強く受けることも意味している。事実、1970年代後半以降のイノベーション研究を代表するAllen(1977)は、研究所におけるエンジニアのネットワークを実際に図として描き、研究開発プロジェクトのパフォーマンスとの関係を分析していたが、この研究により、他社とのネットワークが成功の重要な鍵となる条件を明らかにしたことになる。
すべて 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
一橋ビジネスレビュー Vol.56,No.2
ページ: 78-89
赤門マネジメント・レビュー Vol.7,No.9
ページ: 687-706
赤門マネジメント・レビュー Vol.7,No.10
ページ: 741-756
http://www5e.biglobe.ne.jp/~hypersup/bibliography/index.html