3年計画のうちの初年度に当たる平成17年度は、当初計画どおり主に既存の非営利分野である公的セクターならびに協同組合等を対象に、そこにおける株式会社形態の活用状況の実態を、直接訪問調査することによって把握することに重きを置いた。 訪問調査の対象とした第1カテゴリーは、2001年にそれまでの非営利組織形態から株式会社化した東京、大阪、名古屋の3証券取引所である。いずれも担当者から株式会社化の経緯と成果についてヒアリングし、公共性と営利性の両立などの問題についての所見を得た。第2カテゴリーは協同組合であり、生協のナショナルセンターに当たる日本生活協同組合連合会から、子会社として擁する株式会社の実態をヒアリングした。第3カテゴリーは第三セクター株式会社であり、「IGR岩手銀河鉄道株式会社」と「青い森鉄道株式会社」の両本社を訪ね、開業後3年間の経営状況などをヒアリングした。さらに大阪府の行政改革室を訪問し、府の出資法人である第三セクターの実態と行政側の政策についても詳しい教示を得た。その他にも、JASDAQに上場した民間企業から上場目的について詳細を聞き、また戦前における松下電器の株式会社化の際の客観事情について、本社や関連の資料館を訪問して、資料・情報を収集した。 理論面では会社法の制定によって株式会社制度が大きく変わることになるので、関連論文を発表した。 実態調査によって新たに得られた知見として、株式会社は理論的には資本調達の仕組みが優れている点にそのメリットがあるとされるが、現実の採用動機はさまざまであり株式会社を選択する理由として10通りほどの目的あることを実態面から探ることができた。
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