研究課題
基盤研究(C)
非営利分野というと今日ではNPOのイメージが強いが、歴史を振り返るならば、公企業に代表されるように多くの例がある。本研究では、非営利分野を広義に理解し、伝統的な分野から、昨今の規制緩和によって認可されることになった構造改革特区内の株式会社立の学校・病院等まで、非営利分野を幅広くカバーすることとし、それらの経営実態を客観的に調査した。そのうえで、非営利分野における株式会社がもつ新しい可能性を探った。実態調査編で取り上げた非営利事業のケースは、具体的には、以下の7つのカテゴリーである。1公的セクター(国)、2公的セクター(地方第三セクター、第三セクター鉄道、まちづくり株式会社)、3証券取引所、4生活協同組合の子会社、5株式会社立学校、6株式会社立病院、7民間非営利株式会社。これらのうち、公的セクター(国)と地方第三セクターは、経営限界が明らかになりつつあり、民営化の方向にある。第三セクター鉄道やまちづくり株式会社は、地方経済の衰退傾向の中で地域振興を担って努力しているが、経営環境は厳しい。規制緩和によって構造改革特区内に認可された株式会社立学校は、多くが初めから株式会社立をもくろんだわけではなく、そのためメディアで注目されているのとは裏腹に、厳しい経営を強いられている。生協は、株式会社との垣根を低めつつある。証券取引所については、株式会社に移行した3取引所と会員制組織にとどまる2か所を比較対照した。今日、非営利分野の株式会社で新しい可能性を最も秘めるものは、民間非営利株式会社(NPC)である。これらは、きわめて多様な存在であり、民間人の知恵の多様性を反映しているといえるが、いずれも設立後間もないこともあって、黒字を出すところまでは達しておらず、目的とする社会的事業を展開しながらも、今後に経営課題を残している。以上のように、本研究の成果は、非営利事業の経営実態を総合的に解明した点にある。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
『論叢 松下幸之助』(PHP総合研究所発行) 第5号
ページ: 2-24
『論叢 松下幸之助』(PHP総合研究所発行) 第6号
ページ: 2-28
中井透編著『価値創造のマネジメント』(文眞堂)
ページ: 30-47
PHP, Issue of Matsushita Kounosuke No.5
PHP, Issue of Matsushita Kounosuke No.6
Value Creating Management(T. Nakai ed.)(Bunshindou)