研究概要 |
平成18年度の研究成果は2つある.1つは,日本における1980年代以降の経営戦略研究の歴史をアメリカの経営戦略論の流れと結びつけて整理したこと.もう1つは戦略ドリフトをもたらす日本企業の組織劣化現象を明らかにする作業をまとめたことである. まず1つめの日本における1980年代以降の経営戦略研究の歴史にっいては,経営学史学会第14回大会(2006年5月)で報告が行なわれ,同学会の年報に論文が収録され公刊される予定である.この論文では,日本における経営戦略研究が米国の経営戦略論を輸入しつつ、日本企業のダイナミックな成長を説明するために構築されてきたことがまず確認される.その上で,米国における経営戦略論の学説的な対立,すなわちポジショニング・ビューとリソース・ベースト・ビューの対立が1990年代に活発化する際に,日本企業の研究から得られた知見が多数リソース・ベースト・ビューの側に流れ込むことも手伝って,多くの日本企業研究者はリソース・ベースト・ビューの流れに身を投じてきたこと,しかも本来の日本企業の問題を直接見ようとせずに,むしろポジショニング・ビューとリソース・ベースト・ビューの対立という図式の中で,あくまでも日本企業の現状を擁護するような立場が永続したことを主張している. 2つめの研究成果は,戦略ドリフトをもたらす組織劣化現象を実証的に追う研究の一定のまとめ作業が行なえたことであろう.近年の日本企業が直面している戦略ドリフトという現象は,ミドルには調整困難な「重い組織」によってもたらされると考えられる.その<重さ>をもたらす組織デザイン項目のいくつか(たとえば,BU長までの報告経路が長い,BU長のパワーが小さい、計画を重視していない等)が整理できた点が今後の研究に大いに役立つと思われる.
|