本17年度における研究の目的は、産学公連携の目的であるイノベーション(事業・企業創造)を効果的に可能とするシステムとそのコンパクト化について、そのポイントとなるリエゾンに焦点をあてて明らかにすることにあった。 産学官連携システムといった場合、その基本的な要素(機能)はリエゾン-トランスファー-インキュベーションで構成されるといってよいであろう。そして実際、国によって多少の違いはあってもいずれの国の大学もその3つの機能を何らかのかたちで備えているのが通常である。どういうかたちでその機能を備えるのかが本研究の問題意識ではあるが、問題は産学官連携の目的であるイノベーションの効果的なプロセスにとって有効な3つの機能のあり方(マネジメント)である。 英国での調査によれば、ケンブリッジ、オックスフォードともに3つの機能を備えており米国大学を別とすれば世界でもトップクラスの成果を挙げている。両大学ともにリエゾンは大学直轄の機関で各々10〜20名の専門職員がいるが、トランスファーとインキュベーション(サイエンスパーク)は大学の子会社の手によって運営されている。ただし、ケンブリッジの場合、リエゾンとトランスファー機関の職員は兼任である。この場合、3つの機能が担当機関は別であっても一体的に運営されていることが重要である。というのも、3つの機能はビジネスプロセス(ビジネスモデル)という視点でみるならば、リエゾンを起点とする一連のプロセスを形成しており、いずれを欠いてもその機能は効果を発揮しないと考えられるからである。日本の地方中小大学を想定した場合、まず3つの機能を備えることが求められるが、それを如何に少人数で経営上効率的に行なうかが問題となる。その点、ケンブリッジの兼任体制の事例は大いに参考となった。ただ、日本の場合は3つの機能とも兼任体制で行なうことが実際的であり、そのためにはそうしたスキルをもった人材の育成・確保の方法が課題となろう(18年度)。
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